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近江の正月を特色づける行事に「オコナイ」おこないがある。西近江では大津市下阪本の酒井神社と両社神社に伝わる「おこぼさん」(一月六日〜八日)が宮オコナイと寺オコナイの混同した形で伝承されているが、多くの「オコナイ」行事は旧正月あたりから二月中旬にかけて行われる。 この行事は、お正月を迎えて豊作を祈る行い。下阪本の「おこぼさん」は「御講坊」または「御講房」と書き、酒井神社と両社神社の氏子約百五十世帯が行う。行事は一月六日から七日にかけて当番の氏子たちが集まり、祭りの主役である餅で作った人形「オダイモク」を用意し、江戸期から伝わる武者人形を飾って八日に神社へ奉納、湯立て神事などが行われる。 (酒井神社おこぼさんは昭和四十年五月六日、大津市の無形民俗資料に指定された) 一方、県内でいちばんオコナイが盛んな湖北地方(北近江)では坂田、東浅井、伊香の三郡で、多くは神社を中心に行われるため宮オコナイと呼ばれている。山東町志賀谷に古くから伝わるオコナイでは、二月四日に餅米洗いの準備として当家(オコナイバン)の人が川掃除、五日に餅米を洗い、六日に衣装などを整え、七日朝に餅つき、九日から十日にかけて餅膳を神に供えて渡り行列をするといった行事がある。 これに対して湖南の甲賀郡などに伝わるものは、おおむね寺オコナイと呼ばれ、村の仏堂を祭場として行われている。供えるお餅の形は所によって異なるものの、お供えのあと氏子たちが祝い膳を囲み親ぼくを深める所は同じ。 つまり近江のオコナイは冬場の農村で住民たちの心をつなぐ行事として伝承されてきたのである。(2001年2月号掲載) |
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